活動日誌

名古屋城天守閣整備事業について名古屋市議会本会議で質問

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  2018年6月22日、名古屋市議会本会議6月定例会で名古屋城天守閣木造化について、木材の契約段階ではないと質問した大要は以下の通りです。

1 文化庁の求める現状変更許可申請について

7月に名古屋市が文化庁に対し行う行為は、文化庁が定義する「申請」か相談か
【江上議員】通告にしたがい第97号議案、名古屋城天守閣整備事業に伴う木材の請負契約の締結について質問します。
 先月5月7日から天守閣入場が禁止されました。そして、今回の木材の契約です。「2022年完成予定の天守閣木造化は、予定通り進んでいる。もう決まったことだ」と言わんばかりの施策提案が続いています。しかし、この事業は木材契約の段階でしょうか。木材契約の前にやるべきことすら行われていない段階ではないでしょうか。この契約は、技術提案交渉方式による名古屋城天守閣整備事業の一環であり、どのような段階であるかを明らかにすることも含めて、以下、観光文化交流局長に質問します。
第1に、文化庁への「現状変更許可」の申請についてお聞きします。現天守の解体、木造化するために現状を変更しようとすると、文化庁長官の許可が必要です。許可の申請を名古屋市は、この7月に行うとして聞いてしました。一方、文化庁は、5月31日、参議院文教科学委員会で、名古屋市から「具体的相談をまだ受けておりません」と答弁しています。
 そこで質問します。7月に名古屋市が行う行為は、文化庁が定義する「申請」なのか、その前の相談なのか。市はどのように位置づけているのかお答えください。

現状変更許可の申請ではない

【観光文化交流局長】7月に行うのは、文化庁の内部会議である復元検討委員会で審議していただくために必要な、天守閣整備事業の基本構想や、復元原案などの図面類を含む資料を提出するもので、現状変更許可の申請ではございません。
この資料が、復元検討委員会で審議され、認められたのち、現状変更許可申請を行い、文化審議会に諮問され、許可されるという流れとなります。

文化財法による手続きは進んでおらず木造化は決まっていないのに、木材調達の契約を進めるのは民主的手続きに反する
【江上議員】7月に行うのは、申請でないと回答されました。名古屋市の内部では、「木造天守が決まった」としていますが、文化財法による手続きは、進んでいない。「木造化は決まっていない」ことが明らかです。そんな段階で、木造化のための木材調達の契約を進めるのは民主的手続きに反することは明らかです。

2 バリアフリーについて

福祉都市環境整備指針ができて以降、指針の適用を守らなかった「新しい公共建築物」建設はあるか
【江上議員】第2にエレベーターを含むバリアフリー問題です。「誰でも名古屋城天守閣に登れるようにしてほしい」とエレベーター設置を障がい者のみなさんが市に求めています。この願いは当たり前のことです。名古屋市もバリアフリーの方針を持っています。「年齢の違いや障害の有無にかかわらず、すべての市民がお互いの理解を深めあい、共に手を携える『人にやさしいまち名古屋』をめざします。」と名古屋市の福祉都市環境整備指針で示しています。「高齢者や障がい者など、だれもが安全・快適で気軽に外出でき、社会活動に参加できる」ことをめざすと名古屋市総合計画2018でも掲げています。
 そこで質問します。福祉都市環境整備指針ができて以降、「新しい公共建築物」を建設するにあたって、指針の適用を守らなかった施設があるのでしょうか。お答えください。

基本的には指針に基づき整備され、やむを得ず因難な場合にも何らかの措置がとられている
【観光文化交流局長】健康福祉局に確認したところ「福祉都市環境整備指針」ができて以降の本市施設の整備にあたっては、基本的には当該指針に基づく整備がされ、またやむを得ず因難な場合にも、 何らかの措置がとられているものと考えている、と聞いております。

現時点でエレベーターに代わる「新しい技術」はあるか

【江上議員】河村市長は、「歴史的建造物を次世代に引き継ぐことは任務」だとして、「エレベーター設置なし」を明らかにしました。その代わり、「新しい技術」を開発するから、バリアフリーに対応できる、と述べています。障がい者の方が、エレベーターを主張しているのは、「エレベーターが最も安全に昇降できる手段」であり、「家族や友達みんなが一緒に上がれて楽しめるようにしてほしい」という願いに沿うものだからではありませんか市長の言う「新しい技術」として、「車いすで乗降可能なはしご車」「装着型の移動支援機器」などを例に出しているようです。これに対して、「はしご車に乗せられて城に入る気持ちを本当に考えているのか」「私たちは荷物ではない」と怒りの声が出ています。「新しい技術」は、開発費もどれだけの費用がかかるかわかりません。その費用は税金で支払うのではないでしょうか。名古屋市の依頼した最新の調査では、年間345万人の入場者が50年間続くと見込んでいます。5月の4日、5日には、3万人を超える入場者だったそうです。その方々が天守閣に行くことができても、これからは、車いすの方は登れないということを想像してみてください。東京パラリンピックで、カナダの車いすバスケットチームのホストタウンになっていますが、その町のシンボルに車いすの方は登れない。こんなことを現実に進めるおつもりでしょうか。
 そこで質問します。障がい者のみなさんが求める「誰もがみんなと一緒に楽しく登れる」「新しい技術」は、現時点であるのでしょうか。2022年12月までにできる見通しがあるのでしょうか。お答えください。

歩行アシスト機器やパワーアシストシートが実用化されている
【観光文化交流局長】議員ご指摘の「障がいのある方もない方も同様に楽しくのぼれる」「新しい技術」についてでございますが、 地元の福祉製品の開発企業と地元大学の学識者が連携して、歩行アシスト機器を開発しており、実用化されているものがあります。また、介護の現場において介護作業を支援するパワーアシストシートなどの開発も進められ、実用化されていると伺っております。これらを含め、大学や企業に具体的なお話をお伺いしているところです。
今後は、新技術の開発に関し、木造天守の階段の実物大模型を建設し、障害者団体を交えたバリアフリーに関する協議会の設置や、新技術を国内外から募集するための検討調査を行い、新技術の実現に向けて検討を進め、2022年12月までに実現してまいりたいと考えておりますので、ご理解を賜りたいと存じます。

電動車椅子とは全く関係ない 新技術はないと回答すべき

【江上議員】「歩行アシスト機器」とか「介護作業を支援するパワーアシストスーツ」があるから、「新しい技術」があると回答されました。この歩行アシスト機器とは、歩くき方をちょっと軽くするだけ話、これは荷物を持つ方が腰を軽くなるようにする話、電動車椅子とは全く関係がありません。求めている機器はないと回答すべきです。

市長には人権問題という認識はあるか

5月28日の障がい者の方との意見交換会で、河村市長は、「市長選でも早期復元の民意を得た」と強調し、知的障害のある息子さんをお持ちの女性が、「多数決ではかってはいけないものに人権問題がある」と反論したという記事がありました。6月19日、障がい者の方の呼びかけで600人が抗議行動を行いました。
市長、エレベーター問題は、城に上れればいいというのでなく、「みんなで、だれでも同じように一緒に楽しく登れる」という個人としてあたりまえの権利が求められている人権問題です。市長は、人権問題という認識がありますか。あるかないか、端的にお答えください。

人権の侵害には当たらない

【河村市長】木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針では、様々な工夫により可能な限り上層階まで上ることができるよう目指し、現状よりも天守閣の素晴らしさや眺望を楽しめることを保証すると。また障害者の皆様や不自由な皆様が天守閣に上ることを排除するものではありません。また、エレベーターの設置に代えて新技術により必ず天守閣へ上っていただくことを保証しているので、人権の侵害には当たらないと考えております。

3 現天守閣について

現天守閣の歴史的価値
【江上議員】第3に、「歴史的建造物を復元」という問題です。市長は「歴史的建造物の復元だからエレベーターは設置しない」と言います。今、名古屋市の復元整備基本構想(案)に対する文化庁の復元検討委員会の意見が、先日の経済水道委員会で明らかにされました。
「戦後都市文化の象徴であるRC(SRC)造(鉄筋鉄骨造りの)天守を解体するにはなお議論を尽くす必要がある。史資料の豊富さということのみで、名古屋城天守を木造とする考えが正当化できるかどうか検討を要する」
という指摘です。5月6日に天守閣を登った方の新聞の感想記事に、1959年の現天守の完成直後の思いでで「鉄筋コンクリートだけど、外観は戦前に近い姿だったのがみんなの自慢でした」と言われています。戦後復興の象徴として市民の願いで作られ、外観は、資料に基づいて精巧につくられたものです。名古屋市の基本構想案の中の記述に、現天守閣の価値として、「その根拠資料の豊富さとそれに基づく外観復元は、他の城郭には見られない特徴であると位置付けることができる」とあります。さらに、「(戦後)復興の象徴としての城郭の再建であると同時に、展示収蔵機能を兼ね備えた博物館相当施設として市民生活に寄与してきたと言える」と記述しています。現天守も再建から59年たちます。鉄筋鉄骨コンクリート建物として名古屋市本庁舎と同様に歴史的建造物としての価値があるのではないでしょうか。
 そこで質問します。現天守閣も歴史的建造物としての価値があると考えますが、いかが認識しているのかお答えください。

近世城郭の姿と近代建築の機能性を備え、戦後復興や地域振興など多重のシンボル性を包括
【観光文化交流局長】現在の天守閣の価値は、特別史跡名古屋城跡保存活用計画において、市民の機運の高まりにより再建が実現した、近世城郭としての姿と近代建築としての機能性を備えた建造物であり、また、戦後復興や地域振興といった多重のシンボル性を包括する名古屋のシンボルとして存在していることと評価しております。

歴史的建造物として価値がある現復元天守を解体するには相当の理由がいる
【江上議員】現天守閣の「歴史的建造物」としての価値を認める答弁でした。
名古屋市の「復元整備基本構想案」でも、現天守閣の再建は、「戦後の住宅不足等、生活の根幹にかかわる問題が山積みしている中、経済的困難の中でも多額の寄付が集まっ」たとか、「『二度と燃えたり壊れたりしないように』という市民感情や願いが込められているともいわれている」と記述されています。
市民の機運、建築技術、近世城郭における近代以降の建造物復元整備の歴史、博物館としての活用など、現天守の価値を基本構想案では42ページ中、14ページにわたって記述しています。それでも、昨年12月から文化庁に提出しているこの文書について、さらに、復元検討委員会の意見として、現天守の価値について説明が求められているのです。
焼失してなくなった建物を復元した本丸御殿と異なり、今、回答されたように歴史的建造物としての価値がある現復元天守を解体して木造化をしようというのですから、相当の理由がいるのは当たり前です。しっかりと時間をかける必要があります。費用も莫大にかかります。

4、石垣について

 文化庁の求める「現在の石垣の劣化状況等に関する現況調査」をいつまでに、どんな体制で行うか。
【江上議員】第4に、石垣問題です。
昨年5月16日の参議院文教科学委員会で文化庁は、名古屋城天守木造化の条件として、「現在の石垣の劣化状況等に関する現況調査を実施すること」など4条件を満たす必要がある、と答弁しています。天守地下1階の穴倉の根石・背面調査はまだ行われていません。調査は、来年3月までかかると名古屋市は、5月9日の学者など有識者による天守閣部会で、明らかにしました。また、6月1日の有識者による石垣部会では、基本設計で行ったとしていた天守外堀の石垣調査の追加調査を求められ、これもまだ行われていないのでないでしょうか。さらに、調査の専門家である学芸員についてです。昨年7月まで1人であった石垣担当の学芸員が今年3月退職したと聞きました。学芸員の増員と言われますが、調査体制は厳しい状況ではないでしょうか。
そこで、質問します。文化庁の求めている「現在の石垣の劣化状況等に関する現況調査」は、いつまでに行う予定でしょうか。また、どんな体制で行う予定でしょうか。お答えください。

年度内に報告書をまとめたい 7月に考古の嘱託学芸員2名を募集する予定
【観光文化交流局長】議員おたずねの「現在の石垣の劣化状況等に関する現況調査」は、昨年度から実施している基礎調査と、現在行っている詳細調査の結果を反映させ、一旦7月までに取りまとめ文化庁に提出し、最終的には年度内に報告書を取りまとめたいと考えております。
調査体制については、現在考古主幹1名、併任ではございますが考古主査が1名、そして考古学芸員2名の体制で進めております。また、考古の嘱託学芸員2名を7月に募集する予定としております。

「特別史跡である石垣をしっかりと保全していくことも重要」(河村市長)に変わりないか

【江上議員】石垣問題についても市長に聞きます。市長は、昨年10月13日の特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議で「特別史跡である石垣をしっかりと保全していくことも重要であると認識しておりますが、石垣部会の構成員皆様方のご意見を伺いながら、文化庁が指摘しているような石垣の保全について対応していきたい」とコメントを出しています。この姿勢に今も変わりないですね。端的にお答えください。

変わりない
【河村市長】平成29年8月9日開催の第23回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議、石垣部会で読み上げましたコメントにあります、「特別史跡である石垣をしっかり保全していくことも重要である」との認識については変わっておりません。従って文化庁が指摘している石垣の保全について、石垣部会の意見を伺いながら石垣の保全を行って参りたいと考えております。

5 木材について

「名古屋城天守間のために鎮守の森が伐られている」という記事があったが、承知しているか。
【江上議員】最後に、木材の調達についてお聞きします。こんな話があります。今年3月高知県の神社の総代という方から、「ヒノキを竹中工務店から依頼されてきた。伐採させてほしい、という話があった」と電話がありました。また、「名古屋城天守閣のため鎮守の森が伐られている」という題で、「愛知県各地の神社で、鎮守の森の大木が次々と伐られていると聞いた。」と新城市の例が掲載された昨年8月のヤフーニュースの記事があった、と連絡してきた方がいました。木曽ヒノキ、国産材の不足ということで、全国で、「名古屋城天守閣木造化」のために樹木が伐採されているのでないか、名古屋市以外の人たちに不安を与えているのではないか、と心配になりました。
そこで質問します。今述べたような木材の買い付けについての話を名古屋市は承知しているのでしょうか。事例があれば明らかにし、どのように考えているかをお答えください。
以上で第1回目の質問とします。   

そのような事実はない(竹中工務店)
【観光文化交流局長】ご質問にある記事の内容について、竹中工務店に確認したところ、そのような事実はない、と聞いております。

木材の契約段階ではない
いったん立ち止まって市民の声を聞くべき
【江上議員】差別を助長するような公共建築物をつくっていいのでしょうか。現事業はいったん立ち止まって、みんなの声、意見を聞く場、時間を求めます。木材の契約の段階でないことなど、審議を委員会で引き続き行うこととし質問を終わります。

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