名古屋市職員給与について2月28日、本会議で質問しました。名古屋市役所ホームページの議会中継・本会議・2月28日をご覧ください。以下、江上の質問と答弁です。
人事委員会勧告すら守らない河村市長
職員の給与に関する条例の一部改正について、及び、補正予算職員の人件費について質問します。
今年度の人事委員会の勧告は、給与692円(0.18%)引き下げる。ボーナスは、0.165月上げる、平均年間給与5万2千円の引き上げするものです。ところが、市の提案は、給与は勧告通り引き下げ、ボーナスは、0.1月分のみ引き上げ、0.065月、金額にして年間2万5千円の引き上げを見送るものです。これに対して、人事委員会の意見で、「人事委員会勧告制度の趣旨と異なり遺憾である」と表明されました。また、本来給与改定の審議は、昨年11月議会で行われるべきものであり、それだけ、職員の給与改定が遅れ、生活に支障をきたしているのではないでしょうか。
名古屋市の職員も、給与を得て生活をする労働者です。戦後、憲法で公務員も労働者として、憲法第28条で、団結権、団体交渉権、争議権という労働基本権が認められています。しかし、「公務員は、全体の奉仕者」ということを理由にして、権利が制約されてきました。その代償措置として、人事委員会勧告基づく給与改定等がなされています。したがって、最低限、勧告にさえ従わない給与改定は、憲法違反ではありませんか。
そこで、質問します。人事委員会は、勧告に沿った給与改定がなされないことに対し、今回の給与改定が憲法違反であるという認識をお持ちでしょうか。また、市長は、今回の給与改定は、憲法違反ではないという理由をお聞かせください。
河村市長の回答は、
- 勧告尊重しなければならないと、憲法にも地方公務員法にも書いてない。
- 人事委員会勧告は尊重する。
というもので、憲法違反とは認めませんでした。
人事委員会は、
今回の勧告の取り扱いに対する憲法上の認識についてお答えします。
- 人事委員会の勧告制度は、憲法第28条に規定する労働基本権の制約に対する代償措置として、地方公務員法上の情勢適応の原則に基づき、職員給与と民間給与との均衡を図り、職員の適正な処遇を確保することを目的として設けられたものでございます。
- したがいまして、人事委員会といたしましては、憲法にかかわる仕組みとして、勧告を最大限尊重していただくべきものと考えております。
- 今回の勧告の取り扱いにつきましては、特定施策の事業費に充てるために、本委員会の勧告内容を一部実施しないものであり、これが憲法に違反するとは断定いたしかねますが、人事委員会勧告制度の趣旨とは異なるものであることから、先日意見を申し上げた通り遺憾でございます。
職員のやる気や、市職員応募に影響していないか
つぎに、給与改定が最低限人事委員会勧告に沿わないことによる影響についてお聞きします。河村市長は、人事委員会勧告に対して、過去どのような取扱いをしてきたでしょうか。
今年度を含めこの3年間勧告通りの改定が行われていません。「課長級以上は月例給与及びボーナスの改定を見送る」こともしました。では、それ以前はどうかと言えば、確かに完全実施しています。しかし、内容は、マイナス勧告を完全実施したということであって、職員に不利な状態が河村市長在任中ずっと続いているということになります。
そこで、一つは、職員が係長以上の役職に就く条件である「係長昇任選考」の受験状況について調べてみました。幹部職員になるためには、この選考に合格しなければなりません。その受験率は河村市長就任以前から低下傾向にありました。河村市長になっても、その傾向は続いています。特に、女性に顕著にみられます。人事委員会の報告では、「受験率低迷の傾向は、とりわけ女性職員に顕著で」あるとしています。今年度の受験率は、10.6%です。そのうち男性は12.8%、女性は7.3%になっています。
昨年度の人事委員会報告で、「本市の組織力の低下や、ひいては市民サービスの低下を招きかねないとの危惧」と指摘しています。給与改定によって、さらに、管理職の給与が上がらないだけが理由とは言いませんが、給与が影響しているのは間違いありません。
人事委員会は、係長昇任選考の受験状況が悪くなっている理由として給与改定が勧告通り実施されていないことをどう考えているでしょうか、お聞きします。
次の影響として、名古屋市職員採用試験の受験者が愛知県職員採用試験と比較して低迷している点についてお聞きします。市長が当選した2009年4月。その年の本市職員採用試験で大卒程度を受験した人数は、事務で、2369人。同じ職種で、愛知県を受験したのは、932人。名古屋市と愛知県は同一試験日です。ところが、翌2010年には、名古屋市は、1453人に対し、愛知県は、1630人と逆転しました。その後は、名古屋市のほうが上回っているとはいえ、今年度で見ると、名古屋市1568人に対し、愛知県は1499人となっていて、市長当選時と比べると愛知県がぐっと多くなっています。どこに原因があるかと調べてみました。給与問題はどうか。初任給では、2009年当時名古屋市のほうが愛知県より高い。2010年も名古屋市のほうが高いのに愛知県が名古屋市を上回ったのです。その後、名古屋市が持ち直しているが、下降線をたどっています。一方、愛知県は、維持している。初任給は、2011年以後は、愛知県のほうが高くなっています。今年度は、やっと名古屋市のほうが高くなりました。それでも、受験状況に変化はありません。
このようなことから、人材確保という点で、以前ほど名古屋市に希望者が来なくなっているのではないか。公務員全体の人気が低下しているとはいえ、同日の試験日である愛知県との間で、このような変化があります。単に給与面だけとは言いません。河村市長の公務員に対する発言もあるのではないか。その具体的な表れが給与改定に出ているのはないかということです。「やる気に満ち、積極的な姿勢を持った人材」の確保の必要性を昨年度の人事委員会報告で指摘しています。
職員採用試験での愛知県との比較でこのような傾向が出ていることに対し、勧告通り給与改定されないことが、優秀な人材を確保して市民サービス向上を求めるべき観点から問題ではないか、人事委員会はこの影響をどのようにお考えでしょうか。
人事委員会の回答は、
・ 係長昇任選考の受験率については、近年、低下傾向にあり、このことは、職員から「自分は担当職員のほうがあっている」、「育児や介護など私生活が忙しい」といった声が寄せられていることから、職員のライフスタイルに係る様々な事由の影響を受けていると考えられます。
- 一方、職員採用試験については、本市と愛知県の近年の状況を見ますと、受験者数は、本市が減少傾向にあるのに対し、愛知県は増加傾向にあります。
- このことは、多少の増減はあるものの、本市の募集人員が減少してきたのに対し、愛知県では増加してきたことなどの影響を受けていると考えられます。
- このように、係長昇任選考と職員採用試験は、様々な事由の影響を受けていると考えております。
- しかしながら、人事委員会の勧告制度は、労働基本権制約の代償措置として、職員の適正な処遇を確保するものであり、勧告を通じて職員に適正な給与を支給することは、職員の士気の向上や、公務における人材の確保にも資するものでございます。
- 従いまして、人事委員会といたしましては、今告通りに給与改定が実施されないことで、係長昇任選考や職員採用試験の受験者の心理に与える影響がないとは言えないものと考えております。
この答弁を受けて、江上が、
○ 憲法や地方公務員法に書いてあるかどうかでなく、勧告制度の経過から問題としています。今回の給与改定は、憲法違反ではないという理由を市長に聞きましたが、お答えがありません。理由を上げることができないということでしょう。自分の思いでなく市長としての回答を待ちましたが残念です。
○ 市長、働く人の権利を守るのが任命権者である市長の役割です。その市長が、人勧を尊重せず、憲法違反とも認めない、理由も上げれない。私はやはり問題があると思っています。このような姿勢が、職員のやる気をそぎ、人材確保にマイナスになっていると思うが、市長は、どのように認識しているのか。お聞きします。
河村市長回答:江上さんは公務員。私は商売人。生まれが違う。平均619万円。納税者(から言うと高いと思う)。私の哲学。職員のやる気がなくなるなんてことはない。(人事委員会の調査で、事業所)50人以上を調査(して給与レベルを決めるの)はやめろといっている。
これに対して、江上は、
- わたしは、係長選考試験の受験率の低下とか、採用試験の低迷が、名古屋市にとってマイナスであり、市民サービスに大きな影響を与えると考えています。しかし、市長の答弁を聞いていると、実は、そんな影響など関係ない、と言わんばかりです。
○ 最後に
人事委員会も述べている「 憲法にかかわる仕組みとして、人事委員会勧告を最大限尊重する」ことを河村市長は行おうとしていません。
憲法を守る立場からも、人材を確保するという点からも、少なくとも人事委員会の勧告通り実施することを求めて質問を終わります。
以上のやり取りです。